2012年10月上旬2
これが復興予算か 国会・政府やっと調査
2012年10月5日
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東日本大震災の復興予算が、被災地の再建と無関係な事業などに使われていると指摘される問題で、国会と政府が遅まきながら調査に乗り出し始めた。被災地支援のために、投入された国民の税金が無駄遣いされている実態にどこまでメスを入れられるかが課題だ。ただ、説明を求められた官僚は「日本再生に向けた政府方針に沿って使っている」の一点張り。与党側からは腰の引けた対応も目につく。 (生島章弘)
衆院決算行政監視委員会(新藤義孝委員長)の平将明理事(自民)は四日、本紙の取材に「二十五年も増税して財源をつくるのに、不適切と思える事業が多い」と述べた。
同委員会の野党理事は三日、復興財源の使途が不適切だと思える事業に関し、財務省など担当省庁の幹部から事情聴取した。
この中で、北海道と埼玉県の刑務所で利用する小型油圧ショベルなどを約三千万円で購入した件について、法務省は北海道と埼玉県は被災地に近く、がれき撤去などの仕事に就くための職業訓練に必要と主張した。
企業の設備投資を国が一部負担する事業(約三千億円)をめぐっては、経済産業省は被災地と取引があるとの理由で、中部や近畿地方の会社を補助対象にしたと説明。このため、岩手、宮城、福島の被災三県には全体の一割未満しか事業費が支出されなかった。
また沖縄県の国道整備や、首都圏などの国税庁関連施設の耐震化工事などに充てられたケースもあった。本紙取材で、復興とは直接関係のない原子力関連の研究費に流用されていたことも発覚した。
不適切な使途がまかり通っている理由は、政府が昨年七月にまとめた復興基本方針にある。復興財源で被災地再建に加え「日本再生」にも取り組むと明記した。これにより、復興予算の使途は被災地に限定されないというのが官僚の論理だ。
野党は「話にならないものがある」と、来週にも同委員会の閉会中審査を求める方針だが、与党理事は消極的な姿勢を示している。
一方、政府の行政刷新会議は二〇一二年度の全事業について、各府省が予算執行状況を点検した「行政事業レビュー(見直し)」を分析することで、不適切との指摘がある事業についてチェックを進めている。不適切だと判断すれば、各府省に見直しの必要性を指摘する考えだ。
ただ、復興関連を含め五千事業もあり、復興関連事業に焦点を絞ったチェックが行われているわけではない。漫然と精査すれば、どこまで無駄に切り込めるかは見通せない。
政府は復興予算として、住民税や所得税の増税などで一一年度から五年間で計十九兆円を確保。所得税は一三年一月から二十五年間増税される。
東日本大震災:調査捕鯨にも復興予算 水産庁「安定供給、宮城・石巻に必要」 シーシェパード妨害で運営費不足…穴埋め?
毎日新聞 2012年10月06日 西部朝刊
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◇首かしげる地元
東日本大震災復興予算から22億8400万円を投じ、農林水産省が昨年度実施した「鯨類捕獲調査安定化推進対策」に、捕鯨関連産業の盛んな被災地・宮城県石巻市の水産関係者が首をかしげている。事業の目的は石巻の復興を念頭に、反捕鯨団体の妨害対策を強化するなどして南極海で安定的に調査捕鯨を行うことだが、調査捕鯨で東北に揚がる鯨は震災前でも全国の1割台。被災地復興の費用対効果でみれば疑問符がつく。【神足俊輔】
石巻市や地元関係者によると、乗組員など調査捕鯨関係者の約1割に当たる25人程度が石巻市民。市内には鯨の加工品製造業者が2社あり、津波で倒れた巨大な缶詰形タンクで有名になった「木の屋石巻水産」は被災して県外で操業を再開している。
水産庁は「鯨の関連産業は大きくはないが一定ある。鯨肉の安定供給が復興につながる」と強調。5日の閣議後記者会見で郡司彰農相も「120社、1200人の従業員がいる」と述べたが、これは末端の小売店や料理店の従業員まで含めた数字とみられる。
今回の事業で水産庁が安定供給をうたう背景には、調査捕鯨の運営費不足がある。調査捕鯨は捕った鯨を調査副産物として販売し、その収入で運営。09年度収入は507頭で27億円だったが、10年度は反捕鯨団体「シーシェパード」(SS)の妨害で調査を打ち切ったため172頭、9億円にとどまった。
昨年度の第3次補正予算で認められた事業費のうち約18億円は、調査捕鯨の実施主体の財団法人「日本鯨類研究所」に支払われる調査経費の補助金。水産庁は「偶然」としているが、SSの妨害で目減りした収入とほぼ一致する。残りの5億円足らずが、SS対策のため水産庁監視船を派遣する費用だった。
ちなみに、鯨類研究所から乗組員に支払われる給料は、捕れた頭数にかかわらず一定。しかも、今回の事業費が投じられた昨年度の調査捕鯨で、地元関係者は「石巻には一頭も入っていない」と話す。
石巻市水産課は「乗組員に市民がいるので、SS対策は市民の安全を守ることになる。現地の復興も捕鯨対策もどちらも必要だ」との見解。一方、木の屋石巻水産の担当者は「調査捕鯨全体の将来を考えると今回のような事業は必要だと思うが、それが『復興予算』と言われてもピンとこない」と語った。
石巻魚市場によると、漁業、水産業の復旧は震災前の3割程度。震災で漁船を流された男性(61)は「原発事故の影響で満足に漁もできず、将来的な見通しも立たないのに国の対策は遅々として進まない。調査捕鯨も大切だが、税金の使い方を考えてほしい」と希望した。
震災に乗じた予算ではないかという指摘に、水産庁国際課は「石巻の復興につながるという認識は変わらない」と説明している。
2012年10月6日5時58分
復興予算で官庁改修 防災名目、120億円使用
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東日本大震災の復興予算が、全国の官庁施設約100カ所の耐震補強などに約120億円使われ、来年度予算でも60億円要求されていることがわかった。被災地では復興に必要な予算が届かない例もあるのに、「防災」を名目に官庁の改修費がふくらんでいる。
朝日新聞は官庁施設の多くを管理する国土交通省と財務省(国税庁)の復興予算を調べた。2011年度、12年度の復興予算からは国交省が約100億円、国税庁が約20億円を官庁施設の改修費などに回していた。13年度予算の概算要求でも国交省が57億円、国税庁が3億円を求めている。
これらは、「5年で19兆円」と見込む復興予算のうち1兆円をつぎこむ予定の「全国防災対策費」から出ている。政府が昨年7月につくった復興基本方針で、震災を教訓にして防災を進める場合は被災地以外でも耐震化などに使えることになっている。
官庁施設の改修などに使われている復興予算
復興予算が調査捕鯨対策などに 衆院監視委が使途検証へ(10/06 19:37)
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衆院決算行政監視委員会(新藤義孝委員長)は6日までに、東日本大震災の復興特別会計の予算が復興とかけ離れた事業に使われているとして2011、12年度予算の検証に向けた作業を始めた。財務省が委員会に提出した資料には、反捕鯨団体シー・シェパードによる妨害活動への対策を強化する水産庁の「鯨類捕獲調査安定化推進対策」23億円や沖縄県の国道整備6千万円など8事業を挙げている。総額は5千億円余りでこのうち一部が被災地関連以外に流れており、委員会は「国民の常識から外れるものも多い」と問題視している。
復興予算 各省庁に見直し要求
2012年10月6日
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岡田克也副総理兼行政刷新担当相は五日の記者会見で、東日本大震災の復興予算が無関係な事業に使われていると指摘される問題で、妥当でない事業は政府の行政刷新会議で取り上げ、各府省に見直しを求めていく考えを明らかにした。「国民に増税までお願いするのに、被災地にお金が十分に行き渡らないことになれば本末転倒だ。見直しは必要だ」と述べた。
復興関連事業をめぐっては、各府省が全事業の予算執行状況を点検した行政事業レビューを踏まえて、刷新会議の事務局が分析をすでに始めている。東日本大震災復興基本法などの趣旨や目的から懸け離れている事業をどこまでチェックできるかが課題だ。
刷新会議は妥当でないと判断した事業については、来年度以降の予算編成で復興予算を使わないよう財務省や各府省に求めていく方針。
岡田氏は、復興予算が無関係な事業に使われることになった背景として「一般会計に厳しいシーリング(概算要求基準)がかかっている中で、復興予算に活路を求めたことがあったかもしれない」と述べた。
これに関連して、平野達男復興相は記者会見で、来年度予算からは復興予算の査定や編成に復興庁が参画していく考えを強調。下地幹郎防災担当相は、被災地以外の道路事業にも復興予算が充てられていることについて「国民から理解が得られない部分があるなら、手直しすることが大事だ」と述べた。
東日本大震災:外務省、被災学生の米派遣延期 ビザ取得折衝で不手際 内定者「裏切られた」
毎日新聞 2012年10月07日 東京朝刊
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被災地の学生ら約40人を9月から米国に派遣するはずだった外務省の青少年派遣事業が、ビザ取得手続きの遅れで6カ月間延期された。大幅な計画変更で約半数が参加を断念する方向。震災復興のための情報発信という趣旨に共感した学生たちからは、ずさんな事業計画に「外務省の事業だから信用して応募したのに裏切られた」と批判の声が上がっている。外務省の担当者は「学生たちに落ち度はなく、申し訳ない」と平謝りだ。【福島祥】
外務省などによると、復興予算72億4700万円を費やして実施するアジア、オセアニア、北米地域との青少年交流事業「キズナ強化プロジェクト」の一環。日本再生に向けた海外での理解促進や、風評被害払拭(ふっしょく)のための効果的な情報発信を目的としている。一定の語学力と意欲があれば、被災地以外の学生も参加できる。
公募で選ばれた計200人が今年9月から来年3月まで米国に滞在し、語学やビジネス慣習の研修を受けた後、企業などで3カ月間のインターンシップを行うプログラム。渡航費や宿舎代の他、月額900ドルが手当として支給される好条件だった。
関係者によると、今春の公募に応じたのは約50人しかおらず、外務省は書類選考や面接を経て、約40人の派遣者を内定。ところが7月初旬、ビザ取得手続きのサポートを委託した米国の団体「ローラシアン協会」から、米政府がインターンシッププログラムの全般的な見直しを行っており、作業終了までビザを発給できないと日本側に報告があった。
外務省などが米政府側と折衝に乗り出したが、その後もビザ取得に必要な書類を米側から発行してもらう手続きに予想以上の時間がかかり、9月の出発に間に合わなくなったという。
同省は7月下旬になって派遣開始を6カ月間延期することを決定。内定していた学生たちには延期後のプログラムに参加するか、期間を1カ月に短縮する代替プログラムに参加するか選択してもらうことにした。
だが、内定者のうち、いずれかに参加する意向を示しているのは半数程度にとどまっており、同省は新たに学生50人程度の追加公募を始めた。
参加を辞退した関西の大学2年の女性(19)は「震災の風化を防ぎ、海外の目を被災地の復興に引きつけるための情報発信に関わりたいとの思いで応募した」といい、「行政のずさんな一面を見せられた。もう振り回されたくない」と不信感をあらわにした。
大学院に通う男性(23)は就職活動などへの影響を懸念して参加を断念。「面接で震災に関する質問が全くなく、疑問も感じていた。今は予算は別のことに使った方がいいのではないかと思っている」と話した。
復興予算届かない 被災地中小の申請 6割却下
2012年10月7日
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東日本大震災で被災した中小企業の復旧を支援する今年八月の「第五次中小企業グループ補助事業」をめぐり、復興予算からの補助金交付を求めたグループの約63%が「国の予算が足りない」などといった理由で申請を却下されたことが分かった。却下されたグループ数は二百三十一、申請額は千五百億円超。被災地と無関係な地域の工場への設備投資や、核融合エネルギー研究など復興予算になじまない使途に多くのお金が使われ、被災地への予算が圧迫されている。
中小企業グループ補助事業は津波で被災したり、原発事故で避難を余儀なくされたりした商店街や漁港などのグループに、施設や設備の修理などにかかる費用の四分の三を国と県が補助する制度。
国は二〇一一年度の当初予算でこの事業に二百五十五億円を計上。一次募集を昨年六月に始めたが、申請額は予算を大幅に上回った。このため募集は今年八月に発表した第五次まで続き、その予算額は約千九百億円に増えた。
補助金交付の是非は各県が申請の内容を審査し決める。第五次募集には岩手、宮城、福島、茨城、千葉五県の計三百六十五のグループ(事業者数は六千六十八)が計二千二百四十五億円分を申請。一~四次の募集では県によって八~九割に達した「却下率」はやや改善したものの、今回も六割超の申し出が退けられた。「計画の中身が補助の要件を満たさない」「国の予算が足りない」などが主な理由という。
野田佳彦首相は九月十二日の民主党代表選の討論会で「グループ補助金などは需要がある」と話した。各県の担当者も「復興のため国には少しでも多くの予算を割いてもらいたい」と訴える。
だが、政府は復興財源で「日本再生」に取り組む方針を決め、対象事業が膨張。予算獲得術にたけた各省庁の部署が、復興予算に不適切な事業を潜り込ませ財源を獲得していった。これによって結果的に被災地に必要なお金が回らない状況となっている。
◆地元で工場再建 なぜかなわない
うっそうとした雑草の土地に、建設会社社長田中一雄さん(四十代、仮名)の住宅部品の加工工場がポツンと立つ。以前は住宅などが立ち並んだ宮城県沿岸の地は、工場の従業員らが行き交うだけで閑散としている。
震災直後、自宅と工場は津波で流された。家財道具は一切見つからず、結婚式と家族の写真一枚、数枚のジャージーだけが見つかった。しかし、家族や親戚は皆助かり「命に感謝する」日々だ。
「もう一度、地元で工場を再開したい」。一月、日本政策金融公庫からの借金や全壊した住宅の保険金を充てるなど二千五百万円を自己負担し、消失したトラックや工作機械などを購入した。知人からグループ補助事業の話を聞いたのはその直後だ。
取引先の建設業者などに声をかけてメンバーを募り、賛同したグループの従業員数は百人を超えた。何度も話し合い計画書を県に出したが、選考からは、あっさり落ちた。皆、津波に流され、家も仕事場も失った事業者ばかりで、多額の借金を抱えながら仕事を再開させようとしている。「一体、何が足りないというのか」
宮城県の担当者は「グループ補助事業は共同事業に重きを置いている。共同での除塩作業や太陽光発電など、地域の復興に貢献する事業があるかがポイント」と説明した。
田中さんは「書類を書く技術で補助金の是非が決まっているのでは」と審査方法や基準の曖昧さに疑問を持った。「商店街など多くの事業者が深刻な状況を理解されず、認可を得られていないと聞く。国や県は事業者の現状を、実際に目で見て判断してほしい」と訴える。 (望月衣塑子)
復興予算:被災地外支出 平野復興相「きちんと精査する」
毎日新聞 2012年10月07日 17時25分(最終更新 10月07日 20時09分)
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平野達男復興相は7日のNHK番組で、東日本大震災の復興予算が被災地以外で震災対策などとして支出されている問題に関し「個々の予算でみた場合、いかがなものかというものもないわけではない。きちんと精査をして、来年度予算以降は被災地に特化した予算を作る」と述べた。
平野氏は5年間で19兆円に上る復興予算について「全て被災地が対象になっているわけではなく、(企業の)立地補助金や全国防災という形で次の災害に備えた予算も入っている」と説明。そのうえで「日本経済は、東日本大震災で当初想定された衝撃状況からは脱しており、復興予算として計上する必要性はなくなっている。防災の予算についても、額をどこまで限定するかという問題が出てくる」と指摘した。【岡崎大輔】
復興予算、被災地以外の税務署改修や刑務所にも
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野党が、東日本大震災の復興予算が被災地以外で使われているケースが目立つとして、政府を追及する姿勢を示している。
衆院決算行政監視委員会の野党委員は今月3日、復興予算の対象事業のうち、文部科学省の「国立霞ヶ丘競技場災害復旧事業」など8事業について、所管省庁から事情を聞いた。このうち、財務省の「国税庁施設費」(2011年度第3次補正予算で12億円)は、「震災時の業務継続のため」として、全国の税務署の改修などにあてられていることが判明。法務省の「被災地域における再犯防止施策の充実・強化」(同3000万円)は、北海道と埼玉県の刑務所での職業訓練に使われていた。法務省は、「受刑者が出所した時に被災地で働くかもしれない」などと説明したという。
(2012年10月7日19時16分 読売新聞)
復興予算:設備投資補助金 510件中、被災3県は30件
毎日新聞 2012年10月07日 20時17分(最終更新 10月08日 00時07分)
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東日本大震災の復興予算を使って経済産業省が民間企業の設備投資に補助金を交付する「国内立地推進事業」は、補助対象510件(総額2950億円)のうち被害が著しい岩手、宮城、福島の3県での事業が約30件しか含まれていない。一方、補助金の受け手にはトヨタ自動車、キヤノン、東芝などの世界的大企業の名も。被災地からは「復興に乗じた補助金のばらまきでは」との声も聞こえる。【松田真、袴田貴行】
今年2月と7月に発表された補助対象は大企業からベンチャーまでさまざまで、北海道から沖縄まで全国に点在。大企業で3分の1、中小企業などで2分の1が補助される。予算総額2950億円は経産省の補助金ではかつてない規模という。
同省は「復興に関係ないとか予算流用と非難されるのは誤解だ。復興の基本方針で必要性が示されている」と反論。選定に当たって被災地への貢献度も評価されているとし、国会などで批判されている岐阜県関市のコンタクトレンズ工場の案件についても「被災地の企業から重要部材を購入しており、経済波及効果がある」と言う。
復興予算から支出する根拠として同省が挙げた復興基本方針には「復興施策」の項目があり、確かに「震災を契機とした産業空洞化に鑑み、国内立地補助を措置する」とも記載されている。
ただし、この項目の冒頭には施策の目的として「被災地域の住民に明るい希望と勇気を与える」と明記。復興への効果が未知数な事業への多額の補助金交付が理解を得られるかは微妙で、福島県郡山市の仮設住宅で避難生活を送る同県双葉町の主婦、天野八枝子さん(62)は「それだけあったら復興住宅がいくつ建つのか……」とあきれた様子で話す。
経産省を批判して11年9月に退官した元経産官僚の古賀茂明さんは「今回に限らず、政府が新方針を出す時にはどの官庁も自分の事業を盛り込めるように動く」と指摘。この事業を所管する経済産業政策課長の経験もあるだけに「空洞化対策なら、法人税減税や規制緩和など他にやるべきことがあるはず。補助金を出せば民間への影響力は増すし、天下りの利権も生まれる」と非難した。
「復興予算きちんと精査」 平野復興相、「使途に問題」認める
2012.10.7 21:27
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東日本大震災の復興予算が、被災地の再建とかけ離れた事業に使われている問題で、平野達男復興相は7日、NHKの番組で、「きちんと精査し、来年度は、できるだけ被災地に特化した予算を作りたい」と述べた。衆院決算行政監視委員会(新藤義孝委員長)でも連休明け以降、予算検証のための国会閉会中審査が行われる見通しだ。
番組で、平野復興相は「いかがなものかという予算がないわけではない」と述べ、復興予算の使途に問題があることを認めた。
問題になっている事業は、被災地以外の工場への投資にも適用される経済産業省の「国内立地推進事業費補助金」(2950億円)や、文部科学省の「国立競技場災害復旧費」(3億3千万円)など。政府が昨年7月に決定した復興基本方針で、産業空洞化や全国各地の防災対策などを復興施策に含めたことで使途が拡大した。
復興予算は5年間で19兆円の予定だが、平成24年度当初予算までに、すでに18兆円を計上した。25年度概算要求では、各地の防災事業がさらに増えた。
政府の復興構想会議検討部会の専門委員、五十嵐敬喜・法政大教授は「一般予算で計上すべきものを、省庁が復興予算として便乗して計上した。国民感情から離れている」と批判。衆院決算行政監視委員会の平将明理事(自民)も「復興予算の趣旨が拡大解釈されており節度を求めたい」としている。
2012年10月7日23時49分
調査捕鯨・海外交流・沖縄の国道…復興予算、何でもあり
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東日本大震災の復興予算のなかに復旧・復興に役立つとは言いがたい事業が含まれている。調査捕鯨や青少年の交流事業に投じられたり、「防災」の名目で沖縄の道路整備にお金が使われたり。被災地からは「使い道がおかしい」という疑問の声も出ている。
復興予算のなかにはこじつけに近い事業がある。
これは復興のための事業?
東日本大震災:復興予算は被災地へ 平野復興相「来年度以降、特化」
毎日新聞 2012年10月08日 東京朝刊
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平野達男復興相は7日のNHK番組で、東日本大震災の復興予算が被災地以外で震災対策などとして支出されている問題に関し「個々の予算でみた場合、いかがなものかというものもないわけではない。きちんと精査をして、来年度予算以降は被災地に特化した予算を作る」と述べた。
平野氏は5年間で19兆円に上る復興予算について「全て被災地が対象になっているわけではなく、(企業の)立地補助金や全国防災という形で次の災害に備えた予算も入っている」と説明。そのうえで「日本経済は、東日本大震災で当初想定された衝撃状況からは脱しており、復興予算として計上する必要性はなくなっている。防災の予算についても、額をどこまで限定するかという問題が出てくる」と指摘した。【岡崎大輔】
被災地外へ復興予算、大臣も「いかがなものか」
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平野復興相は7日のNHKの番組で、東日本大震災復興予算の被災地以外での使用を問題視する声があることに関し、「私から見ても、いかがなものかというものもないわけではない。きちんと精査し、来年度予算以降はできるだけ被災地に特化した予算をつくることが必要だ」と述べた。
今後は可能な限り被災地に限定して復興予算を使っていく考えを示したものだ。
政府は、復興予算として2011~15年度の5年間で少なくとも19兆円を見込んでいる。平野氏は、「すでにフェーズ(局面)は変わった。日本の経済は当初想定された衝撃からは脱し、復興予算として計上する必要はなくなった。防災の予算も、額をどこまで限定するかという問題が出てくる」と指摘した。
(2012年10月8日12時28分 読売新聞)
復興予算問題、11日に小委 衆院、民主不参加で流会も
2012.10.9 16:51
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衆院決算行政監視委員会の小委員会は9日、幹事会を開き、東日本大震災の復興とかけ離れた事業に復興予算が使われていたとされる問題で、11日に小委を開催することを新藤義孝小委員長(自民党)の職権で決めた。
ただ幹事会には問題の検証に消極的な民主党側は出席しなかった。小委はメンバー14人のうち8人を民主党が占め、流会する可能性も高いとみられる。
復興予算には、被災地の復旧、復興を主な理由として引き上げた所得税、住民税の増税分が充てられている。新藤氏は記者団に「国民が25年間の増税を覚悟して捻出した復興財源が使われていいのか、政府にただしたい」と述べた。
問題視されているのは、反捕鯨団体シー・シェパードによる妨害活動への対策を強化する水産庁の「鯨類捕獲調査安定化推進対策」23億円など。
東日本大震災:復興予算「なぜ競技場に」 震災でひび、補修工事1.5億円--識者批判
毎日新聞 2012年10月09日 東京夕刊
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東日本大震災の復興予算は東京・国立競技場の改修工事にも充てられている。震災でひび割れた樋(とい)や壁を補修するもので、政府の復興基本方針にも沿うとして昨年度の3次補正予算で認められた。しかし「なぜ東京で、しかも競技場に」という疑問は消えない。競技場を管理・運営する独立行政法人「日本スポーツ振興センター」は昨年度、施設整備だけで約30億円もの補助金を国から受けており、緊急なら他の事業を削るべきだったとの指摘もある。
国立競技場は昨年3月11日の揺れで、通路の天井の隙間(すきま)に設けてある十数カ所の鉄製の樋やコンクリートの壁がひび割れるなどした。余震で樋が落下する恐れがあるとして、日本スポーツ振興センターは補修工事費3億3000万円を要求。所管する文部科学省が予算に上げた。
同省スポーツ・青少年企画課の担当者は「震災で壊れたものを直す復旧事業。放置すると利用者に危険だ」と工事の必要性を説明。工事は今年5月に始まり、現在通路などに足場が組まれている。ただ国立競技場は建て替え計画が浮上しているため、樋を安価なステンレス製に変更。工事費は1億5225万円と半減した。
同センターは11年度、国立登山研修所(富山県)の改修費などとして約30億円の補助金を国の一般会計から受け、予定通り消化した。経済ジャーナリストの荻原博子さんは「国民が何のため復興増税に同意したと思っているのか。国立競技場を補修したければ別の工事を止めればいい」と憤る。【石丸整】
復興予算:法務省が受刑者訓練に2765万円
毎日新聞 2012年10月09日 21時02分(最終更新 10月09日 21時28分)
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東日本大震災の復興予算が被災地以外の事業に使われている問題では、法務省も昨年度の3次補正予算で、北海道と埼玉県の刑務所で行う職業訓練の経費2765万2000円を計上した。出所した受刑者の再犯防止のため、労働需要の高まっている被災地で働けるよう小型建設機械の運転資格を取らせることを目的としている。ただ、被災地で働くかは出所者次第。期待通り復興に生かされるかは未知数だ。
田中慶秋法相は9日の政務三役会議で「復興予算の流用ではないかとの指摘もある。説明がつくのか点検してほしい」と指示した。
予算の内訳は1台約500万円の小型油圧ショベル4台分の購入費や、訓練を受ける受刑者の受験手数料など。北海道月形町の月形刑務所と埼玉県川越市の川越少年刑務所で既に事業は始まっている。
支出の根拠の一つは政府の復興方針。そこでは「復興に向けた労働需要の高まりに対応した刑務作業・職業指導の実施」と記載されている。ただし「被災地域における再犯防止に向けた取り組みとして」との前置きがあり、被災地や避難先での事業の実施が前提とも読める。
被災地以外の刑務所で実施されている理由について、同省矯正局は「既に小型建設機械の職業訓練をしていたり、スペースや指導者の確保が困難だったりするとの理由で、被災地内で希望する刑務所がなかった。このため、できるだけ被災地に近い地域の施設で実施することにした」と説明している。
しかし、受刑者が出所後、被災地でがれき処理に携わるかどうかは分からない。この点について、同局の説明は「被災地のがれき処理に小型油圧ショベルの運転手が集められていることで、他の地域で有資格者が足りなくなっていることも考えられる。その穴を埋めることも広い意味では復興支援だ」とやや苦しい。
それでも同省の幹部は「がれき処理という被災地の復興のニーズに応えられるだけでなく、被災地や周辺地域における再犯防止も期待できる。一石二鳥の意義ある事業だ」と胸を張っている。
◇公安調査庁は車14台2754万円
一方、法務省の外局である公安調査庁は昨年度の3次補正予算で、過激派や外国のスパイに目を光らせるため、無線配備の車両14台の購入費として2754万9000円を復興予算から計上し、認められた。
同庁によると、被災地で革マル派や中核派が、▽避難している被災者▽支援に訪れたボランティア▽反原発運動に携わる人たち--に対する勧誘を強めており、外国が原発などの重要情報を不正に入手しようとする動きもある。購入した車両は調査官が対象者を追跡するため導入するもので、宿泊施設を確保できない場合の宿代わりにも使用されている。
公安調査庁幹部は「過激派による被災地での活動実態が現実にあり、監視が必要だ。政府が原発などにおけるテロの未然防止対策として『テロ関連情報の収集や分析能力の強化』に努める必要があるとしており、これに基づいている」と説明している。【伊藤一郎】
【社会】復興予算の流用が指摘される主な事業
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一、国税庁庁舎の耐震改修費 12億円
一、アジア大洋州・北米諸国との青少年交流費 72億円
一、国内立地推進事業費補助金 2950億円
一、沖縄国道整備費 6000万円
一、受刑者の職業訓練費 2800万円
一、反捕鯨団体による調査捕鯨妨害対策費 23億円
※事業は2011年度第3次補正予算分(2012/10/09-21:06)
臨時国会:召集時期定まらず、11月にずれ込みも
毎日新聞 2012年10月09日 22時44分
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赤字国債発行のための特例公債法案が焦点となる臨時国会の召集時期が定まらない。野田佳彦首相は「財政運営が困難になる」と野党に無条件の協力を迫るが、自民党は協力条件に「『近いうち解散』の明確化」を迫って譲る気配がなく、停滞の責任を互いに押しつけあっているためだ。首相と自民党の安倍晋三総裁らの党首会談の日程も未定で、10月下旬とみられた開会時期が11月にずれ込む可能性が出てきた。
「党首会談の中身と目的がまだ明確ではない。会えばいいという状況ではない」。民主党の輿石東幹事長は9日の記者会見でこう語り、党首会談の日時を決めるのは時期尚早との認識を強調した。
特例公債法案が成立しなければ11月末にも国庫が底を突くが、首相は解散時期を明示しない方針で、野党も妥協の気配はない。輿石氏は9日、周辺に「党首会談をすればお互いの言い分がはっきり分かる」と発言。与野党対決を辞さず、「国会停滞の責任は野党」という構図を浮き彫りにする狙いがある。首相に近い閣僚経験者も9日「臨時国会は開かなくてもいいが、不成立の責任は野党にも行く」と語った。
安住淳幹事長代行は9日、国会内で記者団に対し、10月支給分の政党交付金約41億円の申請を見送る方針を明らかにし、野党をけん制した。一方、自民党の石破茂幹事長は記者会見で「きちんと条件を整えれば特例公債法案は通る」と解散時期の明確化を重ねて要求。公明党の山口那津男代表も東京都内の会合で「冗談じゃない。国会を開くから協力をというのが本筋だ」と怒りを示した。
党首会談や臨時国会の時期を明確にしない民主党の「あいまい戦略」は、与党過半数割れにあと8人と迫るなか、離党者封じの見通しが立たないためでもある。旧小沢系の山田正彦元農相が独自の勉強会結成の準備を進めるなど、内閣改造や党役員人事での「党内融和」は成功していない。
田中慶秋法相の外国人献金問題も頭痛の種となっている。党執行部は「その一事をもって政治家が入れ替わるのはよくない」(細野豪志政調会長)と予防線を張るが野党の攻勢は必至だ。復興予算の流用問題が加わって早期の国会召集への消極論が広がっており、党幹部は9日「法案の準備などを考えれば開会は11月にずれ込む」と語った。
2012年10月10日03時00分
復興予算で攻める自民 決算監視小委幹事会で使途追及
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東日本大震災の復興予算の使途をめぐって、自民党が民主党の追及に乗り出した。9日には衆院決算行政監視委員会(新藤義孝委員長)の下部組織の小委員会幹事会が開かれたが、民主党は欠席。党内には復興予算が新たな火種になりかねないとの警戒感が強く、国会審議に消極的だ。
■民主は欠席、火種を避ける
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復興予算に含まれる事業(2011年度補正予算)
復興予算 優先順位つけ水膨れ防げ
2012.10.10 03:08
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東日本大震災の復興予算をめぐる批判が高まっている。被災地とは直接関係がない多くの事業に支出されているからだ。震災対策を名目に各省庁が予算の獲得合戦を演じたとすれば問題だ。国会による使途の検証が欠かせない。
復興事業は来年度予算の概算要求でも多額の費用が計上されている。野田佳彦政権は復興予算の水膨れを防ぐため、内容を精査して優先順位を明確化し、必要に応じ予算組み替えなどにも取り組むべきだ。
政府は昨年7月、「震災復興に5年間で19兆円を充てる」との復興基本方針を決めた。これにもとづき原発事故の除染作業や使われなかった費用を除き、すでに約18兆円が昨年度の補正予算と今年度当初予算に計上されている。
だが、その使途には首をかしげるものが少なくない。アジア太平洋の青少年交流に72億円が支出されているが、海外から被災地などを訪ねてもらい、風評被害の防止につなげるのが狙いという。
また、捕鯨基地がある宮城県石巻市を支援するとして、反捕鯨団体「シー・シェパード」対策費用も23億円が計上された。津波被害に備えるため、沖縄県の国道整備にも6千万円が充てられた。いずれも被災地との関係は乏しい。
復興予算には、全国規模の防災対策事業や産業空洞化を防ぐ立地補助金も含まれている。これが被災地以外の事業に多額の予算が計上された理由の一つだ。
問題は来年度予算にも復興関連として約4兆5千億円が要求されていることだ。このうち1兆円程度は被災地とは直接の関係が薄い事業とされる。徹底した査定に取り組まねばならない。
それでも19兆円とされた復興予算の突破は確実とみられる。次期衆院選をにらみ、与野党には早くも補正予算による追加支出を求める声が上がっているほどだ。
だが、復興予算は所得税や住民税の増税を中心に財源を賄うことになっている。復興予算の水膨れはこうした復興増税の拡大につながりかねない。それでは国民の理解は得られまい。自民党は衆院の決算行政監視委員会での閉会中審査を求めているが当然だ。
被災地では高台移転などにあたる人材が不足している面も大きい。早期復興には予算の確保だけでなく、人員の手配などを含めた総合的な支援が不可欠だ。
復興予算の出所は? 国民生活、負担長く
2012年10月10日 朝刊
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東日本大震災の復興予算は「少なくとも五年で十九兆円」が必要とされる。その財源の半分以上が、増税でまかなわれていることを忘れてはならない。被災地とは関係ない事業に使われる復興予算を検証する上で、あらためて復興増税の中身を整理し、与野党の姿勢を正したい。 (石川智規)
Q 復興予算の中身は。
A 政府は五年間で十九兆円を、被災地のガレキ処理やインフラ投資のほか、原発事故の除染費用などに使うと定めた。これら事業の財源は、復興増税や政府保有株の売却、公務員給与の削減などでまかなわれる。
Q 増税はどのように行うのか。
A 主に三つある=表。所得税は二〇一三年一月から三七年十二月まで二十五年間、納税額に2・1%を上乗せする。財務省の試算では、夫婦と子ども二人の世帯で増える所得税の年間負担額は、年収三百万円で二百円、五百万円で千六百円、八百万円で七千円など。住民税は一四年六月から十年間、世帯収入に関係なく一律年千円を上乗せする。法人税はいったん減税した上で一二年四月から三年間、納税額に10%上乗せとする。
Q 増税の期間や額にばらつきがあるのはなぜ?
A 決定したときの民主、自民、公明の与野党の議論や三党の税制調査会の調整が交錯していたためだ。
政府・民主党は当初、たばこ税を十年間増税して約二兆円をまかなおうとした。しかし、タバコ農家を支持基盤とする自民党が強く反対するなどし、結局たばこ増税は見送り。その代わりの財源として、住民税を当初案の年五百円から千円に増額し、増税期間も延ばした。
所得税も同じだ。政府側は当初「現役世代の負担」にこだわり、十年間で年4%(五兆五千億円)の案を提案した。しかし、公明など野党には年間負担額を少しでも減らすべきだとの意向が強く、政府・与党は譲歩。結局、二十五年間で年2・1%の増税となった。
Q 法人税の期間や額が少ないのではないか。
A 法人税だけは政府の当初案がそのまま野党に了承された。他の税目で与野党の激しい応酬があったのとは極めて対照的だ。当時、産業界は国際競争力維持の名目で法人税の実効税率の引き下げを主張していた。政治側がその要求を丸のみし、比較的軽い税負担とした側面が強い。
一方、所得増税二十五年間は、現役世代にとって「恒久増税」といえ、負担は極めて重い。与野党が国民生活と企業の声のどちらを優先したのか、一目瞭然だ。
東日本大震災:復興予算 衆院委が審議 民主欠席へ、開催は微妙
毎日新聞 2012年10月10日 東京朝刊
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東日本大震災の復興予算が被災地以外の震災対策などとして支出されている問題で、衆院決算行政監視委員会の行政監視小委員会は9日、幹事会を開き、小委員会を11日に開くことを新藤義孝小委員長(自民)の職権で決めた。ただ、民主党は幹事会を欠席した。小委も欠席すれば開会の定数を満たさず、開けるかどうか不透明な情勢だ。
幹事会では、国税庁施設費(財務省)や鯨類捕獲調査安定化調査費(農林水産省)など問題視されている各事業について、小委員会で一問一答形式で審議を行うことを確認した。
新藤氏は幹事会後の記者会見で「行政が行う予算の中身を審査し、改善を図るのは国会の務めだ」と指摘。「立法府として行政側に予算組み替え、縮減、法制度改廃など是正勧告を行うこともできる」と述べ、小委開会の必要性を強調した。
一方、民主党の奥村展三国対委員長代行は9日、国会内で記者団に「(委員会の)理事も筆頭理事も決まっていない。委員が決まっていないので、参加するわけにはいかない」と語った。
小委員会は与党8人、野党6人の計14人で構成。開会には7人以上の出席が必要で、与党側が欠席すれば定数に届かない。民主党は、9月25日の同委理事懇談会、今月3日に非公式で同委理事を対象に行われた各省による説明会にも出席していない。【岡崎大輔】
復興予算 道路事業53%東北外 道内は230億円(10/10 06:15)
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東日本大震災の復興予算の使途をめぐり、道路関連事業費として計上された約1822億円のうち、東北地方以外への支出が53%の約970億円に上ることが9日分かった。道内分も230億円計上され、道内全域の国道の防災対策などに使用。被災地以外の予算使用に対し、与野党内で精査や見直しを求める声が強まっている。
国土交通省は復興予算の道路関連事業の対象として、被災地の道路の復旧・復興のほか、全国の道路の改良や調査・設計、用地買収なども挙げている。<北海道新聞10月10日朝刊掲載>
復興予算、被災地優先のはずが…拡大解釈で奪い合い
産経新聞 10月10日(水)7時55分配信
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東日本大震災の復興予算が復興と関連の薄い事業に使われ、政府の行政刷新会議が予算の使途調査に乗り出す背景には、政府が昨夏決定した復興基本方針で、産業空洞化や全国各地の防災対策などを「日本全体の再生」として復興政策に含めたことがある。各省が「最優先は被災地の復興」(復興庁)との前提を拡大解釈し、予算を査定する財務省も「復興予算」として認めたことが、平成25年度予算でも要求額を膨らませる結果になった。
[IMF・世銀総会] 日本「復興」アピール成功 中国「先進国失格」露呈
震災復興とかけ離れた事業だと指摘された省庁は一様に、「復興基本方針に沿っている」と主張するが、野党は「再生の名のもとに何でもありの予算になっている」と批判を強める。基本方針には、全国的に緊急性の高い防災・減災施策や、企業の生産拠点の海外移転を阻止するための施策などの具体例が記されている。成長分野の設備投資に補助金を支出する経済産業省の「国内立地推進事業費補助金」の2950億円も、その枠内だ。
経産省は、経済効果が補助額の約6倍に当たる1兆8500億円になるとして、「被災地から原材料を調達したり、被災地に供給している企業を優先した」と説明。岐阜県の工場の設備投資に補助金を申請したコンタクトレンズメーカーも、「被災地の雇用の維持と創出に貢献できると判断した」と批判に困惑する。しかし、岩手、宮城、福島の被災3県で、補助金支給の対象になった企業が全体の約5%しかないのも事実。被災した中小企業の再建を支援する経産省の「グループ補助金」も、申請した多くの企業に行き渡らないとの指摘から、さらに25年度予算での要求を決めるなど膨らむ。
農林水産省が計上した「鯨類捕獲調査安定化推進対策」事業も、被災地支援の貢献度が見えにくい。同事業に含まれる反捕鯨団体「シー・シェパード」の妨害活動に対する安全対策などについて、水産庁の言い分は「調査捕鯨で得られた鯨肉が、宮城県石巻市の産業復興に貢献した」というものだ。石巻市の旅館経営の男性は「観光客の半分くらいはクジラを食べて帰る」と述べ、観光振興への効果に期待をかける。これに対し、衆院決算行政監視委員会の委員は「反捕鯨団体への対策というのなら、国民感情から外れている」と首をかしげる。
一方で、被災地以外の道路や海岸堤工事などに利用される「全国防災対策費」について、宮城県の村井嘉浩知事は「国民の増税で賄うので、被災地だけにしか使ってはいけないとは思っていない」(7日のNHK報道番組)と表明。被災地以外での予算の活用を容認した。ただ、25年度予算の概算要求では、復興予算に上限を設けなかった結果、要求額は4兆4794億円に膨らみ、24年度の要求を約1兆円上回った。
日本総研の湯元健治副理事長は「総額ありきの予算で、復興の遅れで消化しきれなくなったため、少しでも関連のある事業に使われたのではないか」と指摘する。予算編成では、省益優先の便乗要求を排除し、「復興」と「防災」に本当に役立つ事業をきちんと選別する必要がある。
復興予算で問題視される主な事業(写真:産経新聞)
政府が復興予算転用を調査へ 野党、民主政権の「無駄遣い」追及の構え
2012.10.10 08:15
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東日本大震災の復興とかけ離れた事業に復興予算が転用されているとの指摘が相次いでいることを受け、政府の行政刷新会議は平成24年度の復興予算の使途を調査し、妥当でない事業は25年度の予算編成で見直す方針を決めた。岡田克也副総理兼行政刷新担当相が9日の記者会見で明らかにした。自民党は衆院解散をにらみ、民主党政権による予算の「無駄遣い」の象徴として国会でも追及を強める構えで、与野党攻防の焦点になってきた。
岡田氏は記者会見で「復興予算への指摘が目立っているので、特に重点的に見ていかなければいけない」と説明。さらに「時間をかけると来年度予算に反映できなくなる。そう時間を置かずにチェックしたい」とも述べ、早急に行政刷新会議での見直し作業を進める考えを強調した。
現在、行政刷新会議事務局は、各府省が24年度予算の執行状況を点検した「行政事業レビュー」の分析を進めており、復興予算にそぐわない不適切事業があるかもチェックしている。東日本大震災の復興基本方針などの趣旨にかけ離れていると判断された事業については、11月中旬ごろまでに行政刷新会議で取り上げ、各府省に来年度予算に取り入れないよう求める。
行政刷新会議の方針を先取りし、各閣僚は復興予算の見直しに動いている。平野達男復興相が7日のNHK番組で「来年度はできるだけ被災地に特化した予算を作りたい」と述べたほか、田中慶秋法相も9日の法務省政務三役会議で、同省関連分の復興予算を点検するよう指示した。
法務省では23年度第3次補正予算で、北海道の月形刑務所、埼玉県の川越少年刑務所でがれき撤去などの職業訓練を拡大するために3千万円を計上した。この2カ所を選定した理由を「被災地に近接している」と説明していることが問題視されている。
アジアや北米との青少年交流事業費(約72億円)、沖縄県の国道整備(6千万円)や国税庁関連施設の耐震化(12億円)といったケースに対しても「被災地の復興と関係がない」との批判が出ている。
一方、衆院決算行政監視委員会(新藤義孝委員長=自民)の小委員会は9日の幹事会で、11日に「復興予算の使途」をテーマに小委を開くことを新藤氏の職権で決定した。だが、審議に消極的な民主党は幹事会を欠席した。民主党は小委メンバーの多数を占めており、流会の可能性が高い。
復興予算、野党「無関係な使途も」…一部停止か
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政府の行政刷新会議(議長・野田首相)は10日、東日本大震災復興予算の使い道に問題があると判断し、2012年度復興予算の一部執行停止も視野に、抜本的な見直しを行う方針を固めた。
刷新会議は、関係省庁の意見聴取などを通じて、11月中には事業の妥当性を最終判断する考えだ。
藤村官房長官は10日午前の記者会見で「情勢が様々変化するので、緊急性や即効性を厳しく精査する必要がある」と述べ、復興予算の一部見直しを示唆した。
12年度の復興予算は約3兆7754億円。復興予算を巡っては、11年度補正予算ですでに執行された事業でも、全国の税務署改修に充てる「国税庁施設費」(12億円)などが計上されており、野党側は「復興と無関係に使われている」と批判している。
刷新会議は9月に入って、11、12年度の復興事業の実態調査に着手した。被災地の復興や全国防災への関わりが薄いと判定された事業は、予算の執行停止や、13年度予算での減額・計上見送りなどを行う考えだ。
(2012年10月10日14時42分 読売新聞)
復興予算:霞が関で進む耐震改修 被災地では仮庁舎
毎日新聞 2012年10月10日 23時27分(最終更新 10月11日 02時18分)
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東日本大震災の復興予算は、全国の官庁施設の耐震改修や津波対策でも使われている。多くの施設を管理する国土交通省と財務省(国税庁)を合わせると、11年度3次補正予算と今年度予算で計約120億円、13年度予算の概算要求でも計約60億円に上る。官庁側にも「被災地に何かをするものでは全くない」(国税庁)と復興に寄与しないことを認める声がある中、被災地の一部自治体では仮庁舎での業務を余儀なくされている。
東京・霞が関の中央合同庁舎第4号館の耐震改修に国交省は復興予算から今年度約14億円を充て、13年度予算でも約18億円を要求している。同省官庁営繕部の担当者は「災害応急対策活動を指揮する内閣府の入る4号館は建築基準法に基づく耐震性能を満たしていない。首都直下地震に備え防災機能を強化する必要がある」と説明。神戸第2地方合同庁舎などの耐震改修、三重県の尾鷲港湾合同庁舎や兵庫県の西宮地方合同庁舎などの津波対策にも使われている。
根拠は、震災を教訓として緊急に実施する必要性が高く、即効性のある防災施策は被災地以外でも復興予算を充てられるとした政府の復興方針だ。
11年度3次補正予算では、国税庁も東京・荒川や兵庫・姫路など12税務署の耐震改修に約12億円を充当。今年度は約6億円を計上し、13年度も約3億円を概算要求した。同庁の担当者は「税務署は一般の来庁者も多いので緊急性は高いと判断した。政府方針に沿っただけ」と説明。一方で「うちの場合は(復興増税、消費税増税を行った)財務省が、と余計に批判を浴びやすい面がある」と本音を漏らした。
震災で本庁舎が壊滅的な被害を受けた岩手、宮城、福島、茨城の計13市町については今年7月、自治体側の要望を受けて震災復興特別交付税で新庁舎建設費を国が全額負担する方針が決定。しかし、総務省市町村体制整備課は「どのような制度にするかはまだ検討中」としており、実際には各自治体とも仮庁舎での業務を続けている。【樋岡徹也、飯田和樹】