2013年01月
『八重の桜』のキャンペーン費用3.4億円 復興予算から拠出
2013.01.21 07:00
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復興予算が霞が関の庁舎改修から役人の福利厚生費まで流用された問題は昨年来大きく報道された。
流用額そのものにもごまかしがある。NHKや朝日新聞など大メディアは、19兆円の復興予算のうち、被災地以外に流用されたのは「全国防災事業」と「企業の立地補助金」を合わせた約2兆円と報じているが、本誌の調査ではそんなものではない。
例えば、復興予算からは震災で被害を受けた役所の施設改修費(官庁営繕費)に総額約137億円(2011年度)が充てられ、そのうち被災地向けの「復旧費用」は4億5000万円となっている。だが、その内容を調べると、実際に被災地で使われたのは約3600万円のいわき地方合同庁舎改修1件だけで、残りは人事院がある東京・霞が関の中央合同庁舎5号館別館の改修に充てられた。
国土交通省の担当者は「東京も被災地です」と説明したが、施設改修費のうち被災3県に使われたのは全体の5%だ。他の復興事業でも、東京などで実施された事業が「被災地向け」と計上されたケースは枚挙に暇がない。
つまり、2兆円どころか19兆円の大半が被災地以外で消えている可能性が高い。
菅内閣の内閣参与を務め、復興増税の経緯を知る五十嵐敬喜・法政大学教授(公共政策)はこう指摘する。
「役人がこれだけ確信的に流用できるところを見ると、被災地の復興資金が本当に19兆円も必要だったのか疑問になる。当面の復興に必要なのは6兆円程度でよかったという経済学者の指摘もある。霞が関は最初から復興予算を大幅に水増ししていた可能性が高い。しかも、復興予算が十分余ってしまうと、決算剰余金を増税削減に回せという声が強まる。
だから霞が関はどんどん流用して復興財源を早く使い切ろうとしているのではないか。そうすれば復興予算はまだ足りないと口実をつけて剰余金を公共事業に使える。今回の補正予算がまさにそうなっている」
その他の復興予算件流用の実態はすでに本誌が詳細に報じたのでここでは繰り返さないが、流用問題を大きく報じたNHKで、今年からスタートした大河ドラマ『八重の桜』のキャンペーン費用も、国交省の復興予算(復興調整費3.4億円)から出されていたことを付け加えておく。
※週刊ポスト2013年2月1日号
復興予算 休職中の役人の給料を支払い可能にする工作も
2013.01.22 07:00
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復興予算の流用批判を浴びた民主党政権は昨年の総選挙直前、「復興予算は原則、被災地以外では使わない」という方針を決め、35の復興事業を凍結した。しかし、時すでに遅し。凍結できたのは総額約168億円分と復興予算全体のわずか0.1%以下にすぎない。
それというのも、シロアリ役人たちは「予算が凍結されないうちに使ってしまえ」と、5年分のはずだった19兆円の復興予算をわずか2年で18兆円も食い散らかしてしまったからだ。
しかも、火事場泥棒的な流用はまだ続いている。財務省は来年度の復興予算の概算要求に「仙台港の税関の大型X線検査装置の復旧等」として約25億円を盛り込んだ。そのうち装置の復旧に本当に必要なのは半額の約12億円で、残りは関西の税務署改修や復興増税導入のための国税庁のコンピュータシステム構築の費用をこっそり潜り込ませていた。
被災者のために使うはずの復興予算をよりによって増税のシステム費用に回すとは許し難い国民への背信行為というほかない。企みは東京新聞の報道によって未然に発覚し、税務署改修やシステム構築予算は一般会計から出すことになったものの、予算を査定する財務省が先頭に立って流用に狡知をめぐらせているのだから、他省庁に歯止めがかかるはずがない。
内閣府は来年度の復興予算(概算要求)に沖縄の国道建設費を盛り込み、農水省は復興事業に職員の人件費や残業代を盛り込み、北海道開発局は休職中の職員の給料まで復興予算から支払っている。
霞が関ぐるみで国民にわからないように予算流用が可能な仕組みをつくりあげていたのだ。
復興増税を決めた2011年の第3次補正の予算総則の修正に秘密があった。総則では、農水省の出先機関である地方農政局の「工事諸費」から職員の人件費や残業代、各種手当を支出できる規定を追加し、北海道開発局の工事諸費には職員の給与・手当に加えて「休職者給与」まで出せる規定を盛り込むなど数々の工作がなされた。
これによって復興予算から、働いていない休職中の役人の給料まで付け回しできるようになっていたのだ。
※週刊ポスト2013年2月1日号
2013年02月
2013年2月2日3時1分
社民党旧本部、復興予算で耐震診断 「流用」批判と矛盾
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社民党の本部が入っていた社会文化会館(東京都千代田区)で昨年中に実施された耐震診断費用の一部に、東日本大震災の復興予算が使われていた。社民党は復興予算が被災地以外の事業に流用されていた問題を批判してきたが、姿勢が問われそうだ。
社民党は昨年6月に始まった耐震診断のため千代田区に助成を申請し、費用の全額約850万円が公費で賄われた。このうち3分の1の280万円余りが今年度の復興予算の「全国防災対策費」から拠出され、残りは東京都が助成した。この助成制度は東日本大震災後に拡充され、国費からも支出されるようになった。昨年11月に使用不可と診断され、社民党は先月26日に党本部を引っ越しした。
また、昨年12月にはこの制度を活用し、1億数千万円に上る社会文化会館の解体費用の助成を千代田区に申請した。区はその約2週間後、約3分の1の助成決定を党に通知。このうち半額は国費で賄われる。区の担当者によると、解体費用の助成は新年度予算からの支出となる。
さんさ踊り子台湾派遣に復興予算1200万円
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郷土芸能「盛岡さんさ踊り」の踊り子ら93人をイベント参加のため3泊4日で台湾に派遣する岩手県の事業に、復興調整費など国の東日本大震災の復興予算約1200万円が支出されることが10日、分かった。
識者は、「復興にかこつけた公費による観光旅行という印象が拭いきれない」と指摘している。
派遣団は踊り子84人と引率員6人、上野善晴副知事ら県職員3人の計93人で、台湾には今月23~26日に滞在。24日に北部の新竹県で開幕する台湾政府主催の「ランタンフェスティバル」初日にパレードやステージで踊りを披露し、25日は台北市内で観光PRを行う予定だが、詳細は未定という。
「盛岡さんさ踊り」は浴衣姿で太鼓や笛と共に路上を踊りながら練り歩くもので、派遣される踊り子の多くは盛岡市周辺の在住。当初は沿岸部の郷土芸能を含めて30人ずつ3団体の派遣計画だったが、台湾政府側から「大人数で踊った方がアピールできる」と助言され、派遣団を一本化した。
県内を訪れる海外客の中で最も多い台湾人の宿泊者数は、震災前の5割前後に落ち込んでいる。県観光課は「台湾の観光客を盛岡に誘致することで、被災沿岸部にも足を伸ばしてもらえる」と説明する。
派遣は、県が復興庁に申請した「台湾研修視察等モデル開発事業」(3962万9000円)の一環で、旅費や滞在費は8割が復興調整費、2割が震災復興特別交付税で充当され、県や参加者の負担はない。県は昨年の一般会計9月補正予算で計上している。
復興予算を充てる妥当性について、県は「様々な見方があるかもしれないが、もし疑義があるなら復興庁の審査の段階で認められなかったはずだ」と主張。一方、復興庁は「被災県側が『効果がある』と言う以上、審査では落としづらい。ただ、台湾で踊りを披露するだけでは、単なる旅行と取られかねない部分はある」としている。
◆復興調整費=復興交付金や各省庁の補助事業など、他の制度では対象外となる復興関連のソフト事業について、国が8割を補助する。残り2割は、国庫補助事業の地方負担分を補うための震災復興特別交付税が充当されるため、実質的に全額国庫補助となる。2013年度政府予算案で100億円が盛り込まれた。
(2013年2月11日11時03分 読売新聞)
さんさ台湾派遣に復興予算 県の観光誘致で1350万円
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震災で激減した台湾人観光客誘致を目的に、台湾に盛岡さんさ踊りの踊り手ら計93人を派遣する県事業に、国の復興予算約1350万円が充てられていることが明らかになり、12日の県議会議会運営委員会で、議員から疑問の声が上がった。
同事業は、県の9月補正予算に計上。踊り手や上野善晴副知事らが今月23~26日まで台湾のイベントでパレードなどを披露するほか、台北駅でリーフレット配布などを行う。
派遣団の旅費と滞在費の8割は、復興交付金などの対象外となる復興関連のソフト事業に補助される「復興調整費」から支給。残り2割は震災復興特別交付税が充てられていた。
(2013/02/13)
東京・豊島区の富士塚 岩の修復で1100万円の復興予算を使う
2013.02.26 07:01
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ターミナル駅として賑わう東京・池袋駅から北東へ徒歩20分ほど。閑静な住宅地の一角に「長崎富士塚」がある。江戸時代の1862年に地元・長崎村の「富士講(富士信仰のグループ)」が建設したもので、霊峰・富士に行けない人々のために、富士山に登拝したのと同じ霊験を得られるとして造られた直径21メートル、高さ8メートルの石塚である。
現在、その長崎富士塚では周囲に足場が組まれ、作業員によって積まれた岩を調整する作業が行なわれている。ずれた岩を修復するために1100万円を投じた工事は3月末までだが、実はこれに「震災復興予算」が使われているのである。
富士塚の隣にあるマンションの住人は目を丸くした。
「地震の時は揺れましたけど、富士塚が崩れたわけじゃないし、ウチの子も毎日のように隣にある公園で遊んでいますよ(苦笑)。歴史のある塚だとは思うけど、まさか復興予算で工事しているとは思いませんでした」
文化庁がまとめた「被災文化財の復旧等」のリストには、〈東日本大震災により被害を受けた国指定文化財の保存・修復等を実施する〉との目的が記され、岩手、宮城、福島の文化財名と復興費用が並んでいるが、なぜかここには「長崎富士塚」や、常盤橋門跡(東京・千代田区)に1億3900万円など、「被災地」というには違和感のある史跡が紛れ込んでいる。
文化庁記念物課に理由を聞くと、「文化財の件数自体が被災地よりも都心部が多いため、そうなっているというのもあります。実際に、山梨では震度5の地震があり、文化財への被害がありました。被災地には、復興予算の他に復興交付金として、地方経由でも文化財修復の費用は出ています。被災地への復興のためには、いろいろと他の予算もあるのです」との答え。
※週刊ポスト2013年3月8日号
東日本大震災:復興予算176億円、がれき受け入れ除外でも交付へ
毎日新聞 2013年02月24日 東京朝刊
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東日本大震災で発生した災害廃棄物(がれき)の広域処理を巡り、がれきを受け入れない秋田県潟上市など7市町と3団体に、国が復興予算約176億円を交付することが分かった。7市町などは当初、受け入れを検討したが、がれきの全体量が判明後、環境省が必要がないと判断し、受け入れ先から除外した。予算は各地の廃棄物処理施設の整備などに充てられる。
環境省は、放射性物質に対する不安などで進まない震災がれきの広域処理を促すため、11年度3次補正と12年度予算で復興財源枠の予算を計上。12年3月には、がれきを受け入れる施設整備などに復興予算を充てると通達した。同省は「がれきの総量が分からない中で協力を求めた。返還は求めない」としている。
対象の自治体・団体と金額は、<北海道>中・北空知廃棄物処理広域連合=28億2000万円<秋田>鹿角広域行政組合=2億円、潟上市=2億8000万円<群馬>伊勢崎市=2億7000万円、玉村町=11億3000万円、高崎市=6000万円、甘楽西部環境衛生施設組合=3億8000万円<埼玉>川口市=36億3000万円<京都>綾部市=2億9000万円<大阪>堺市=86億円【山下貴史】
東日本大震災:復興予算176億円、がれき受け入れ除外でも交付へ
2013年02月24日
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東日本大震災で発生した災害廃棄物(がれき)の広域処理を巡り、がれきを受け入れない堺市など7市町と3団体に、国が復興予算約176億円を交付することが分かった。堺市などは当初、受け入れを検討したが、がれきの全体量が判明後、環境省が必要がなくなったと判断し、受け入れ先から除外した。予算は各地の廃棄物処理施設の整備などに充てられる。環境省は「がれきの総量が分からない中で広域処理に協力を求めた。返還は求めない」としている。
環境省などによると、各自治体・団体への交付額は86億06000万円に上る。
環境省は、放射性物質に対する不安などで進まない震災がれきの広域処理を促すため、11年度3次補正と12年度予算で復興財源枠の予算を計上。12年3月には、がれきを受け入れる施設整備などに復興予算を充てると通達し、「結果として受け入れることができなかった場合でも、返還は生じない」とした。
通達を受け、堺市などは「受け入れ検討」の姿勢を示したが、環境省が受け入れ先から除外したため、交付金だけ受け取る形になった。いずれも返還は考えていないという。
環境省廃棄物対策課は通達について「がれきの早期処理を図るため、一件でも多く受け入れの手を挙げてもらいたかった」と説明。「復興予算が広域処理の呼び水になった。十分効果があり、問題はない」と話している。
◇最多86億円の堺、処理施設を新設
10市町・団体のうち最多の86億円を受け取る堺市は、老朽化した廃棄物処理施設の新設と改修に充てる。堺市には震災がれきを処理する独自の最終処分場がなく、「受け入れ表明は軽々しくできなかった」(市廃棄物政策課)といい、施設の新設、改修も復興予算とは関係ない交付金を申請していた。この場合、市の負担を差し引いた交付額は40億円だった。
一方、環境省は12年4月になって、堺市に復興予算での交付金の支払いを内示。「堺市が新設などを予定している施設の規模なら震災がれきを十分受け入れられると考えた」(同省廃棄物対策課)。その後、環境省は6月に「がれきの受け入れ要請は見合わせる」とする文書を堺市に送ったが、10月19日付で交付を決めた。【山下貴史】
2013年03月
2013年05月
2013年5月9日3時34分
復興予算1.2兆円、基金化し流用 被災地外にも
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【座小田英史、古城博隆】東日本大震災の復興予算のうち約1・2兆円が公益法人や自治体が管理する「基金」に配られ、今も被災地以外で使われていることがわかった。全国で林道を約1900キロもつくるなど、約20基金が復興とあまり関係のない事業に使っている。政府は昨年、復興予算を被災地以外で使わないことにしたが、基金の使い道をチェックしていないため、抜け道になっている。
政府は被災地の公共事業や雇用支援のため、2011~12年度に約17兆円の復興予算をつけた。しかし、沖縄県の国道整備や反捕鯨団体「シー・シェパード」の対策費などに使われていることがわかり、今年度からは原則として被災地以外では使えないことにした。
ところが、朝日新聞の調べでは、約17兆円からいろいろな基金に配られた約2兆円のうち、約20基金に配られた約1・2兆円分が被災地以外でも使えるままになっている。
農林水産省が所管する「森林整備加速化・林業再生基金」には復興予算から約1400億円がついた。「被災地の住宅再建などのために材木が必要になる」という理由だ。
2013年06月
2013年6月3日8時0分
復興予算、雇用でも流用 被災地以外に1千億円
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【古城博隆、座小田英史】東日本大震災の復興予算で2千億円がついた雇用対策事業のうち、約1千億円が被災地以外で使われていることがわかった。被災地以外の38都道府県で雇われた約6万5千人のうち被災者は3%しかおらず、被災者以外が97%を占める。「ウミガメの保護観察」や「ご当地アイドルのイベント」など震災と関係のない仕事ばかりで、大切な雇用でも復興予算のずさんな使われ方が続いている。
この事業は厚生労働省が担当する「震災等緊急雇用対応事業」で、被災者などの雇用を支援するため、2011年度の復興予算で2千億円がついた。臨時や短期間の仕事に就いてもらい、生活を支える目的だ。
このうち915億円は、東北や関東などの被害が大きかった9県が運営する雇用対策基金に配られた。11~12年度に計約6万人が雇われ、その約8割を被災者が占める。
一方、残る1085億円は被災地以外の38都道府県の基金に配られた。朝日新聞が38都道府県に聞いたところ、11~12年度に雇われた人は計約6万5千人にのぼるが、被災者は約2千人にとどまった。
2014年05月
アダルト本やオカルト本も 復興予算の電子書籍化事業
高津祐典
2014年5月13日23時08分
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書籍の電子化を通じて東北復興を支援する。そんな名目で国が2012年度に10億円の復興予算を付けた「コンテンツ緊急電子化事業」(緊デジ)に、不適当な本があったなどの批判が起きている。事業を進めた団体は、出版社に対して内容の再確認を要請中だ。
緊デジで電子化されたマンガの書影を載せたチラシがある。題名は『あぁん…極上の快感エロス&Hぜんぶ見せますっ!!』。チラシは、仙台市の出版関係者の団体「歩く見る聞く東北」が22日に市内で開く緊デジを考えるイベントのためのもの。「これも復興事業なの」と問いかける。
緊デジは13年3月末に6万4833点の電子化を終了。出版の業界団体で作る「日本出版インフラセンター」(JPO)が出版社に電子化したい書籍を募り、費用の半額にあたる10億円を復興予算でまかなった。
どんな本が事業にふさわしいのか。外部の審査委員会は目安を示した。「被災地の人びとの役に立つと出版社が考えるもの(娯楽的なものも含めて)を優先」「多様な試みがあって良いと思います。ただし、公費による補助であることは忘れないでください」
だが電子化した中に、アダルト本などが少なくとも100点ほど含まれていた。オカルト本や古い電子機器の解説本も。東北関連本は2287冊にとどまり、「本当にふさわしいと思った本が集まったとは思えない」と審査委員会委員長を務めたライターの永江朗さんは謝罪した。
JPOは7日、各出版社に20日までに内容を再確認するよう求めた。補助金の返還も視野に入れている。
JPOは12年6月に出版社から受け付けを開始。半年後を締め切りとしたが、11月の段階で集まったのは全体の1割だった。予算を使うには13年3月末に電子化を終える必要がある。JPOは大手に頼み、予算を使い切れる6万点を確保した。「予算消化という官僚的な常識に振り回された結果」と永江さんはみる。