2011年12月25日 朝刊
福島第一原発事故では役に立たず、抜本的な見直しが迫られている原発事故時の対策拠点となるオフサイトセンター(OFC)の問題で、環境省は、二十四日に政府が決定した二〇一二年度予算案に施設改修費約八億円を計上した。専門家からは、小手先の改修をする前に本格的な再検討が必要との批判が出ている。 (榊原智康)
原発のOFCは、全国に十六カ所あり、予算案では、放射性物質が施設内に入らないようにする高性能フィルターの設置や耐震工事などを見込む。
福島第一事故では、原発からわずか五キロの距離にあり、放射線対策が不十分で内部の線量が高く、通信設備も故障した。食料の備蓄も少なく、全く使い物にならなかった。東北電力の女川原発(宮城県)のOFCも津波で全壊し、立地の不備が浮き彫りになった。
原子力安全委員会の作業部会は十月、原発から半径最大十キロ圏の防災対策の重点区域を三十キロ圏(UPZ)に拡大、すべてのOFCがこの圏内に入ることになった。五キロ圏は直ちに避難する区域(PAZ)で、福島第一や浜岡(静岡県)など四カ所が入る。
安全委の作業部会は来年三月末までにあり方の方針を示すとするが、残された時間は少なく、議論が深まるかは不透明だ。方針が見えない中での予算案について、四月に環境省傘下で発足する原子力安全庁の準備室担当者は「現在の場所に残るOFCがあると見込んで予算要求した。既存施設の改修などの方針が決まった際にすぐ対応でき、移転に向けた調査費に充てることもできる」と釈明する。
だが、今回の事故での機能不全ぶりからすると、フィルターを設置するくらいの改修では対応できない可能性が高い。原子力防災に詳しい名古屋大の山沢弘実教授は「事故を受けた反省の議論が足りない。どんな専門家が集まるかなど機能面の検討が必要だ」と指摘。古川路明・名大名誉教授も「箱ものの維持ありきでなくしっかりした方針が必要。予算はその後だ」と指摘した。