議事録を作成していなかったことが判明…隠蔽工作か?
2012年01月
なぜ原子力災害対策本部の議事録がないのか - 1 -
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Updated: 2012/01/23
藤田正美の時事日想:
いったい日本を動かしている人々は、自分たちの責任を心得ているのだろうか。NHKが政府に対して原子力災害対策本部で行われた議論の議事録の公開を請求したところ、議事録が作成されていなかったことが判明した。
これでは政府の事故対応が適切だったかどうか、検証することもできまい。「忙しかったので議事録を作成することができなかった」という原子力安全・保安院の言いわけもにわかには信じがたい。官僚であれば、何はともあれ記録を取っておくのが当然だ。政治家に責任を押しつけられそうになった時に唯一「保険」となるのは議事録である。
「録音もしなかった」というのはいかにも解せない話である。原子力災害対策本部は官邸の中に置かれた。そこで開かれる会議は自動的に録音する仕組みになっていなかったのだろうか。ちょっとした小部屋で行われた非公式の会議などではない。官邸の5階にある総理会議室で行われている話を自動的に録音するのは、当然といえば当然ではないだろうか。まさか緊急事態に直面して対策会議を開く時に、「おい、誰か録音機を持ってこい」などという間抜けな命令をしなければならないというような状況が現代のこの世の中にあっていいはずがない。しかも官邸は最新の装置を組み込んで建て替えられたばかりだ。
よほど誰かがまずいことを口走って、「この議事録は公表するな」などということになったのだろうかなどと邪推してしまう。しかも、東電に置かれた政府と東電の統合対策本部でも議事録はないのだと言う。要するに、たまたま間の悪いときに総理大臣をやっていた菅首相や経産省のお役人も含めて、政府のガバナンスとかコンプライアンスがまったくなっていないということだ。
これでは何を根拠に避難指示を決め、何を根拠に「健康に直ちに影響はないから屋内待機するように」と言ったのか、誰も検証できない。政府や国会の事故調査委員会は、どうやって当時の状況を再現するのだろうか。
原子力災害対策本部の意思決定が行われていたのは総理執務室が置かれている官邸5階だった。ここでの議論や意思決定が、地下の官邸危機管理センターに集まっている各省局長級幹部にうまく伝わらず、コミュニケーションが不十分であった。政府事故調は中間報告でこう指摘している。
なぜ原子力災害というそれこそ日本が経験したことのない災害に直面したときに、危機管理センターで意思決定が行われなかったのだろうか。なぜ一刻を争うような事態のときに、一度の会議で政府のすみずみにまで官邸の意思が伝わるような形にしなかったのだろうか。政治主導にこだわる総理が、役人中心の危機管理センターを嫌がったのだろうか。
●米国の場合は
一国の政策を決める場で、記録を取らないというのはまさにコンプライアンス違反だと思う。米国のキッシンジャー元国務長官は著作の中で、自分が行った「電話外交」の録音をすべて書き起こし、それを国立公文書館に渡したとしていた。さまざまな判断や決定は、結果的に正しいこともあれば、間違っていることもある。さらに時間が経てば、正しかったことも誤りになってしまうこともある。そして何よりも肝心なことは、すべての記録は次によりよい判断や決定をするための材料になるということだ。
米国のホワイトハウスは、会議などは徹底して録音されているはずだ。そして記録の削除は相当の理由がなければできないはずである(ニクソン大統領の執務室で行われた会話の録音テープが、大統領弾劾の1つの有力な証拠になった)。
菅首相は「歴史が自分を正しく評価してくれるだろう」という主旨のことを言ったが、議事録がないという事実で評価は大きく下がると思う。歴史家は客観的資料がないところで判断しなければならないからである。
こうなったら、政府事故調も国会事故調も当時の出席者のすべてのメモを回収し、徹底的に「尋問」してでも記録を作らなくてはならないと思う。歴史的な大事件の重要な資料がないなどという恥を後世に残してはならないのである。
[藤田正美,Business Media 誠]
asahi.com(朝日新聞社):原発事故対応、議事録なし 政府対策本部、認識後も放置 - 東日本大震災
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2012年1月25日3時7分
枝野幸男経済産業相は24日、東京電力福島第一原発事故後につくられた政府の原子力災害対策本部が、これまでの議論を議事録として残していなかったことを明らかにした。経産省は事故後の混乱で手が回らなかったとしているが、事故対応を決める重要会議で何が話し合われたか検証できなくなるおそれがある。
枝野氏は官房長官だった昨年5月11日の記者会見で「危機対応なので議事録をとるような場がほとんどなかった」との認識を示していた。ただ、その後も議事録は作成されないまま、昨年11月にNHKが情報公開請求した後、年明けになって再び問題化した。
対策本部の事務局を務める経産省原子力安全・保安院は23日の会見で、「まだ議事録は作成していない。緊急事態では事後的に作成が認められており、会議の内容や決定は記者会見を通じて説明している」と弁明していた。しかし、枝野氏は24日の閣議後の記者会見で「事故発生後の緊急事態とはいえ、(手続きが)整えられていなかったことをおわびする」と話した。
枝野氏は、保安院に会議の内容を記した文書をつくるよう指示した。来月中にも公開する予定。対策本部の会議には関係省庁の職員らが出席しており、保安院は他省庁にも協力を求め、出席者のメモや記憶をもとに文書をつくるという。
対策本部は原発事故が起きた昨年3月11日に首相を本部長としてつくられ、昨年12月26日までに23回の会議が開かれた。すべての閣僚が出席し、事故対応などの重要な政策を決めた。
ところが、事務局を務める保安院は全会議を公式に記録していなかった。保安院はその理由を「事故後の混乱で文書の作成まで手が回らない状態が続き、その後もそのままにしていた」と釈明している。
公文書管理法では、省庁の職員には、政策が決まる過程を確かめられるよう会議の文書づくりが義務づけられている。作成の期限や罰則などはないが、枝野氏は会見で「国民的関心、社会的影響の大きさを踏まえると、可能な限り迅速に行うべきだった」と話した。
また、政府の公文書管理を担当する岡田克也副総理は24日の会見で、東日本大震災を受けてつくられた緊急災害対策本部でも「(議事録が)作成されていない疑いが濃厚だ」と話した。
岡田氏は「公文書は後から行政を検証する民主主義のインフラ」と語り、震災対応で立ち上げた政府組織すべてで議事録があるかどうかを調べる考えを示した。また、各閣僚に公文書管理法に基づく文書作成を徹底させる。ただ、「事後的につくることが認められないわけではない」として議事録作成を怠った関係者の処分はしないとした。
【震災】岡田副総理「緊急災対の議事録もない…」(01/25 09:41)
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岡田副総理は、東日本大震災の際に立ち上げた緊急災害対策本部で、議事録が作られていない可能性が高いことを明らかにしました。
岡田副総理:「(原子力災害対策本部と)同時期に行われていた緊急災害対策本部、これについても同様に議事録が作成されていない疑いが濃厚であります」
大震災の際に立ち上げた政府の会議では、原子力災害対策本部でも議事録が一度も作られていなかったことが分かり、枝野経済産業大臣が謝罪しています。大震災や原発事故発生という緊急事態だったことから議事録が作成できなかったものとみられます。しかし、法律では、こうした会議の議事録などを残すよう義務付けていて、政府の対応のまずさが今後、問題となりそうです。
震災関連10会議、議事録なし 3会議は議事概要もなし
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2012年1月27日12時21分
岡田克也副総理は27日の閣僚懇談会で、東日本大震災で政府が設置した15会議のうち、10会議で議事録を作成していなかったと報告した。このうち原子力災害対策本部と緊急災害対策本部、被災者生活支援チームの3会議は、議事録も議事概要も作っていなかった。岡田氏は、2月中をめどに事後的な記録を作るよう関係閣僚に指示した。
原子力災害対策本部と緊急災害対策本部はいずれも法律で規定され、首相が本部長を務める組織だった。このほか政府・東電統合対策室と、電力需給に関する検討会合の2会議も議事録はなく、議事概要も一部しか作成していなかった。
原子力災害対策本部が昨年末まで計23回開いた会議の議事録を作っていなかったことが最近発覚したのをうけ、公文書管理担当の岡田氏が全組織についての調査を指示していた。岡田氏は25日、記録が残されなかった理由について「どこが記録をとるのかきちんとした合意がなかった。忙しくて人手もなく、記録が残されなかったのが現実ではないか」と内閣記者会のインタビューで述べ、意図的な隠蔽(いんぺい)ではないと説明した。
【震災】15のうち10の震災関連会議で議事録なし(01/27 13:56)
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東日本大震災に対応するため置かれた15の会議のうち、原子力災害対策本部や緊急災害対策本部など10の会議で議事録が作られていなかったことが分かりました。
震災に関連する政府の会議をめぐっては、原子力災害対策本部の議事録が作られていないことが分かり、公文書を担当する岡田副総理がほかの会議も調べるよう指示していました。その結果、原子力災害対策本部や緊急災害対策本部のほか、政府と東電統合対策室や官邸緊急参集チームなど10の会議で議事録を作っていないことが分かりました。そのうち、原子力災害対策本部、緊急災害対策本部、被災者生活支援チームの3つの会議では議事概要すら作っていませんでした。これを受けて、政府は、これら3つの会議については、来月中に概要を作成することにしました。
震災関連会議、10組織で議事録作らず
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政府は27日午前、東日本大震災に関連する10組織で会議の議事録が未作成だったとする調査結果を発表した。
このうち、首相が本部長を務める原子力災害対策本部、緊急災害対策本部、防災相がトップの被災者生活支援チームの3組織では議事概要さえなく、2組織は議事概要の一部を作成していただけだった。
民主党政権のずさんな対応は、震災対応を検証するうえで支障となる。野田首相は同日の国会で陳謝した。
調査結果は岡田副総理(公文書管理担当)が同日の閣議後の閣僚懇談会で説明した。調査対象は当初8組織とする予定だったが、最終的に15組織に拡大した。このうち、議事録、議事概要の双方を作成し、公文書管理に問題がなかったのは、原子力被災者生活支援チームなど4組織しかなかった。復興対策本部は議事録のみ作成していた。
議事概要さえ残していない原子力災害、緊急災害対策の両本部、被災者生活支援チームは、震災と原子力発電所事故対応の中核的な組織。原子力災害対策本部の事務局を担当する原子力安全・保安院は、未作成の理由に緊急事態だったことを挙げている。昨年4月に当時の滝野欣弥官房副長官(事務)は、各府省連絡会議で「震災関連の資料保存に留意をしてほしい」と各府省に指示していたが、守られなかった形だ。
(2012年1月27日14時34分 読売新聞)
未作成は計10会議 震災関連の議事録
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2012年1月27日 18時00分
政府は27日、東日本大震災に関連する10会議で議事録が未作成だったとの調査結果を公表した。このうち「各府省連絡会議」など5会議は要点をまとめた議事概要のみがつくられ、「政府・東京電力統合対策室」「被災者生活支援チーム」「電力需給に関する検討会合」の3会議では概要も未作成だった。震災対応の検証や今後の指針で参考になるはずの記録管理のずさんさが鮮明となった。
調査は震災、東京電力福島第1原発事故関連の15会議を対象に実施。議事録・議事概要がいずれも未作成なのはこれまでに判明している「原子力災害対策本部」「緊急災害対策本部」の2会議に加え、被災者生活支援チームなど3会議。政府は2月中にこの計5会議の議事概要を作成する方針だ。(共同通信)
会議録、福島県もつくらず 震災直後の対策本部33回分
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2012年1月30日21時19分
東日本大震災を受けて設置された福島県の災害対策本部が、震災から6日間の計33回の会議について、出席者の発言を記録する会議録を作成していなかったことが、県への取材でわかった。
大震災では、政府が設置した原子力災害対策本部など10会議で議事録が作成されていなかったことが明らかになっている。
福島県の災害対策本部は震災当日の昨年3月11日に設置された。本部長の佐藤雄平知事をはじめ、副知事ら幹部、政府関係者らが出席し、今年1月30日まで計247回開かれている。震災直後は、東京電力福島第一原発事故に伴う住民の避難などをめぐり、ほぼ1、2時間おきに会議が開かれていた。
県によると、このうち昨年3月11~16日の33回分は協議内容の項目だけが残され、出席者の発言は記録していなかった。原発事故で一連の爆発が終わったあとの同月17日からは会議録が作成された。会議は当初から報道陣にも公開されている。
県災害対策本部は「会議録の必要性は認識していたが、連続する会議の記録作成には4、5人以上の職員をはりつける必要がある。当時は住民の避難、救出を優先し、手が回らなかった」と説明している。(林義則)
2012年02月
保安院「記録とる意識薄い」 議事録未作成で聞き取り
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2012年2月29日23時56分
東日本大震災後に開かれた震災や原発事故対策の政府会議で議事録が作られなかった問題で、有識者による公文書管理委員会(委員長・御厨貴東大教授)は29日、関係省庁からの聞き取り結果を発表した。「他の役所がつくると思った」「防災訓練で議事録作成の訓練がなかった」など、当事者意識を欠く状況が明らかになった。
調査対象は、議事録と議事概要を作っていなかった原子力災害対策本部などの5会議や、省庁局長らで作る「緊急参集チーム」。
原子力災害対策本部の事務局である経済産業省原子力安全・保安院は「会議は閣僚が状況を共有する場と受けとめ、記録を取る意識が希薄だった」と説明。官邸から会議開催の連絡が来たことで「内閣官房が会議を運営していると受け取った」という。さらに「年1回、官邸で開かれる原子力の総合防災訓練では、議事録を実際に作る訓練が含まれていなかった」ことも理由に挙げた。
電力需給に関する検討会合を担当した内閣官房は「議事録を作成しなかったのではなく、作業が遅れたものと認識している」。被災者生活支援チームを担当した内閣府は「会議というより、配送センターのような仕事をしていた」として、「公文書管理法上、議事録や議事概要の作成義務は課されていないと理解している」と反論した。
自ら調査に当たった御厨委員長は「省庁側に同情すべき点も、そうでない点もあった」と語った。
2012年03月
事故直後から重大性認識=政府本部の議事録概要-メモ、録音記録で再現・保安院
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東京電力福島第1原発事故の対応に当たった政府の原子力災害対策本部などの議事録が作られていなかった問題で、経済産業省原子力安全・保安院は9日、職員らが残していたメモや録音記録などを基に再現した議事録の概要を公表した。事故直後の第1回会合で既に炉心溶融(メルトダウン)の可能性が指摘されており、政府が当初から重大な事故に至る危険性を認識していたことが明らかになった。
公表されたのは、昨年3月11日の事故当日に開かれた対策本部の第1回会合から、昨年12月26日の第23回会合までと、昨年7月15日に開かれた政府・東電統合対策室の全体会合など。
対策本部では本部長を務めた当時の菅直人首相や海江田万里経産相らが出席し、事故対応について議論した。
議事録概要によると、11日午後7時すぎから官邸で開かれた第1回会合では、出席者の一人が「外部の放射性物質の漏えいは確認されていない」「直ちに特別の行動は不要」などと説明していた。一方で「電池で動く冷却だけが動いている」「8時間を超え、炉心の温度が上がることになるとメルトダウンに至る可能性もある」との発言があった。
さらに12日昼の第3回会合では、玄葉光一郎国家戦略担当相が「メルトダウンの可能性がある。避難地域は10キロでいいのか」と指摘していた。(2012/03/09-13:14)
対策本部議事記録、個人メモしかなかった保安院
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政府が9日公開した、東京電力福島第一原子力発電所事故の「原子力災害対策本部」(首相が本部長)の議事概要は、当時の議事メモや会議に出席した閣僚らの発言を本人からの聞き取りも含めてまとめられた。
ただ、議事概要をまとめた経済産業省原子力安全・保安院の担当者は「最初の1週間のメモは不十分で、どれだけ復元できたのかわからない」としている。保安院の説明によると、全23回の会合のうち、1~18回の会合の録音はない。19回目以降は保安院職員が個人的に記録していたが、組織的にはしていなかった。
(2012年3月10日10時43分 読売新聞)